君と始める最後の恋
「先輩は今日楽しかったですか…?」


そう問いかけると先輩はぬいぐるみに向けていた目を私に向けて、目を合わせる。

その何も言わない時間すごく緊張する。

沙羅さんを忘れさせるとかそんな事できないと思う。

それでも今日が無駄じゃなかったって思っていてほしい。


「…楽しかったよ。何も考えず笑えた。」


普段なら意地悪を言ってくるのに私が不安そうな顔をしたからか笑って楽しかったよって答えてくれた。

そんな事が嬉しくて思わず泣いてしまいそうになる。

こんな時まで優しい先輩。


「普通に疑問なんだけどさ、君何で俺の事好きなの。」

「え…」


本人からのまさかの質問で恥ずかしくなってしまう。そんな事聞かれるなんて思っていなかった。

先輩は至って真剣なのか茶化したりそんな様子はない。

どこが好きって好きな所はたくさんある。


「先輩は面倒臭い性格してますけど、なんだかんだどこまでも優しい所が好きです。」

「なにそれ、喧嘩売ってる?」

「いいえ、真面目です!それに沙羅さんを一途に思っている姿も私は好きなんです。」

「…沙羅を思ってたら君に気持ちが行くことが無いじゃん。そうだとしても好きだっていうの?」


そう言われたら確かにかなり苦しい。私は叶わない恋をし続ける事になる。だけどそうだとしても先輩が一途な所が私は好きで、でも幸せにはなってほしいし、我儘だけどなんて言えばいいかわからない。

それでも叶わないと知ってても好きで居続ける意思が強くて一途な先輩の事好きだなって思ったから。
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