君と始める最後の恋
「きっと私も先輩がずっと沙羅さんを好きでも、好きだって言ってます。一途で想い続ける意志の強さも、ちょっと面倒で素直じゃない所も、意外と面倒見が良くて優しい所も好きです。」


そう伝えると先輩は少し照れくさそうに顔を逸らした。

私の言葉でも照れてくれるんだな。

そんな先輩の表情を見逃さずにずっと見ていたい。


「君、すごいよね。そんな素直に好きとか言えるの。きっと俺は、相手に好きな人が居たら伝えるのをやめてる。」

「すごいとかじゃないです。私は隠せないので。気持ち隠してもどうせバレますし。」

「ああ、あり得る。普通にきちんと言わなくてもボロっと言っちゃってそうだしね。」

「それです」


真面目な話をしていたはずなのに少し和やかな雰囲気になって、緊張が少し解ける。

この雰囲気で話しやすくなって、私も聞きたかった事を先輩に質問をする。


「先輩はいつ沙羅さんを好きになったんですか?」

「…随分昔過ぎて覚えてない。気付いたら好きだったし、気付いたら沙羅は兄さんと付き合ってた。」

「告白、しようと思ったことは?」

「あるよ、そう思った時にちょうど沙羅と兄さんがもう付き合ってたから、俺は伝えるの諦めた。幸せそうな2人に水を差したくなかったし。」


相変わらず苦しくて悲しいことを真顔でなんでもない事の様に話す。

いつもそうやって感情に蓋をしてきたんだろうか。

本当は苦しくて切なくて仕方ないはずなのに、そうやって仕方ない仕方ないって諦めてきた結果、何も素直に言えなくなっちゃったんじゃないか。

そんな風に思えて仕方ない。
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