君と始める最後の恋
Episode3

突き放されても

────Side 郁


あれからも何度も何度も考えた、一ノ瀬先輩の事。

何で沙羅先輩の代わりなんて言ったのか。

何であんな発言して突き放したのか。

デート中、帰る流れで「忘れさせてくれるんじゃなかったの?」って引き止めてきたのは何だったのか。

いくら考えても先輩の事なんて理解出来そうにない。

その答えが出ないまま、週明けの仕事。

毎度早く着いて45分になるのを楽しみにしてたはずなのに、今日は始業の15分前が来るのが怖い。

どんな顔で私先輩に会えばいい?

会ったら泣いちゃいそうになる。

伝えない方が、良かったんだろうか。

好きだなんてこんな迷惑な感情。

習慣とは怖い物で、40分くらいになったら自然と立ち上がって給湯室に向かっていた。

別にこれは一ノ瀬先輩にやってって言われたわけじゃない。

コーヒー好きな先輩に朝から頑張って欲しいからって始めただけ。

別にしなくてもいいのに、毎日やってるからって今もこうして自然に淹れに来ている。

だけど今日は給湯室に逃げ込んでいる。席に戻る方が嫌だ。

ここから戻ったらきっと、先輩は来ているだろう。


「…先輩のバカ。」


その呟きは誰にも届かないで虚空に消えるだけ。

私もあの時怒る事が出来たら違ってた?
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