君と始める最後の恋
「もうなんでもいいから、心配だから送らせて」

「嫌です!」

「郁」


急に名前を呼ばれて吃驚して固まってしまう。

沙羅さんや充さんの前で名前を呼んでくれる事はあっても2人きりの時に名前で呼ばれる事は無かった。

驚いて何も言えなくなる私の顔を先輩は優しく触れて親指で優しく涙を拭ってくれる。

本当ずるい、悔しい。

こんなずるくて酷い人をまだ好きでいる事が。


「沙羅さんの事、まだ好きなくせに、自分を好きだって言ってる女を優しくして良いんですか。」

「放っとけないんだよ、君の事は。手が掛かるし、君だって女のくせに沙羅の事ばっかり気にして自分は大丈夫とか言ってこんな夜道1人で歩こうとして危なっかしいし。本当目が離せない。」

「子供扱い止めてください。」

「変わんないよ」


そう言って少し笑って私の顔から手を離す。

それから「帰るよ」と言って歩きだしてしまった。

私って、先輩の何なんですか。本当にただの後輩…?

だとしたら、構いすぎです。
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