ほんとの初恋
3年にもなると浮かれていた生活は落ち着いたものの飲み会は増えてきた。二十歳を過ぎたからだろうけど誘いも増える。
大所帯の時には、後輩達もやってくる。
未成年じゃないのか?
気にはなるが、知らないやつらに関わらないようにしていた。

「賢人先輩、友達送っていくの手伝ってもらえませんか?」
声を掛けてきたのは保健学科の山之内美鈴。
面倒見の良いやつだな。
この子は飲んでないようだ。
「私一人じゃ大変で」
確かに大変そうだ。それにこの子が居るから面倒な事は起きないだろうし、手伝ってやるか。

誰か知らないが長居をしたくなかったから送ることにした。

そんなことが何度かあった。
いつものように山之内が声を掛けてきた。
今日はもう一人、同じ学部の五十嵐郁(かおる)。
彼女らの友達みたいだ。

四人でタクシーに乗って、酔っ払いを降ろし次の子の家に向かおうと思ったら、「わたし、ここから地下鉄で帰るんで」
五十嵐が乗ってこない。
「いや、ついでだし」
「関係ない私までタクシーで送ってたら高く付きますよ」と言って。

関係ないってどういうことだ?
何も考えていなかった。
いつも山之内を送っていくのが当たり前になっていたもんだから。

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