ほんとの初恋
ここは病院からも近い居酒屋。
そこへ仕事終わりに五十嵐が病院関係者とかと入ってきた。
「あっ先輩、こんばんは」
いつものようにぺこりとお辞儀して通り過ぎていく。
「誰?後輩?綺麗な子だね」
綺麗な…、か。
考えたこと無かった。
「付き合ってるやつ、いるのか?」
そんなこと知るか!
やたらグイグイと話してくる。
「俺、ちょっと声掛けてくる」
まじか?
相手のことも考えないで?
ほんとに行ってしまった。グラスだけ持って。
なぜ俺を通さない?
そんなもんか?
完全に腰を下ろして盛り上がっている。
俺を放っておいて、楽しそうに。
タイミングを逃して一人で飲み続けた。

まったく、あいつも同じ大学の同じ学部だったんだから、覚えてないだけで、初めましてじゃないだろ。

思ってたことが口から出てたか、気がつけば前に座って、ニヤニヤ笑ってる。

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