ほんとの初恋
「おまえはバカか?
元々あほなやつって思ってたけど、可愛げのあるあほでほんまもんの大バカとは思わんかった!
しかも二人揃って大バカもんときてるし…、成績が良いだけで、まったく…」
人のことをあほだ、バカだと失礼な!
こいつに言われる筋合いはない。
「判るか?
研修医が終わりました。今から恋愛しますってやつ、そんな器用なやつおらん!」
まぁ、確かに…。
でも二人で食事や映画に行ったりしてたよなぁ。
「そんなもん友達と思ってたら行くやろ」
確かに友達と言われれば…。
「それに俺はいつまでも『増田さん』で、おまえは『賢人先輩』なわけ。
俺は苗字で、おまえは名前」
そんなの学生時代からみんな呼んでたし、言いがかりだろ。
「振られたこととか、もしかしたら自分から好きになった事ってあるんか?」
…、ないような気がする。
「さすがに初恋は?」
何を今更まったく恥ずかしいこと聞いてくる…、俺の初恋は?
「まさか、無いのか!」
今、凄く呆れられてる。
でもそれ以上に自分でも驚いている。
…、無いかも知れない。
「俺はそんなに優しくないから、今から言っておく。郁のこと諦めたつもりは無いから」

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