ほんとの初恋
卒業まであと少し。
俺は大阪の大学に医者を目指して進学することにした。

今日も誰か客人が来ているのか話し声が聞こえてくる。

「ここが賢人君の部屋なんだ」
服部がどうしてここに居る?
なぜ2階まで上がってきてる?

「私ね、大学を卒業したら優人さんと結婚しようと思って
賢人君、ちっとも振り向いてくれないし」
そもそも誰でも良いのかよ!
そんな理由で兄さんと?

「でも今からでも賢人君さえよければ私はどっちでも良いよ」

「…雅さん、俺の部屋に先に行っててって言ったけど、まだここに居たんだ」
服部との会話、兄さん聞いてたよな?
それでも聞かない振りをするんだ。
服部は気まずそうに俯いてる。

「雅さん、行こうか」
何もなかったように兄さんは服部の背中に手を回した。
絶対間違ってる。

兄さんの後ろに咲良の姿が見えた。
「兄さん、咲良の気持ちにいい加減に気づけよ」

兄さんは寂しく微笑んで部屋に入っていった。

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