明けない夜はきっと無い…

19

side暁

次の日、ベッドから夜宵を起こさないように抜け出すと、俺はポルシェに乗って仕事場へ向かった。

会社の地下駐車場の定位置に車を止め、エレベーターで25階まで上がる。

株式会社ブルーローズ。
表向きは広告代理店だが、日々アドレスを変え覚醒剤を売り捌く相手を探したり、夜宵が引っかかったようにTwitterやInstagramで運び屋を募集していたりする。

れっきとしたヤクザだ。

とりあえず挨拶する部下を適当にあしらい社長室に向かった。

一応、表向きの広告代理店の仕事もこなさなければならないし、それが結構な収入にもなっていたりする。

その為、うちで働くのは、営業やマーケティング、Webデザイナーや、コピーライターなど、ヤクザだがかなり優秀な人材を取り揃えている。








夜宵は、ちゃんと朝飯食ったのか?
ちょっと痩せすぎているから、もっと太らせるか。

ふと、仕事から離れれば、マンションに置いてきた子猫を心配するかのように、夜宵の事が頭に浮かんだ。

だけど、夜宵とは住む世界が違う事も心得ていた。







その時、副社長の地位にいる、神桜がコーヒーを淹れて持ってきた。

「どうだ?
シャブは売れてるか?」

「えぇ、芸能界に何人かターゲットを見つけましたから、がっぽり入って来るはずです。」

「そうか…」

「どうしましたか?
何か心配事でも?」

「いや、夜宵の事だが…」

「あぁ、あのガキですか。」

「…しばらくしたら、実家に送り返そうと思う。」

「はぁ!?
あんな上玉を売らないんですか!?!?」

「夜宵は…売らない…」

俺はそう言って、ぶつぶつ言う神桜を社長室から退出させた。
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