明けない夜はきっと無い…

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side暁

その日、仕事が終わったら直帰しようとしたのだが、華栄会の若頭の1人、八雲《やくも》に捕まってしまった。

八雲は相変わらず強引に俺を飲みに誘った。
そして、仕事の話もあると言う。

仕方なしに俺は1時間以内に帰るという条件付きで、八雲との飲みに付き合った。

会員制のバーに行き、奥の席に座った。

俺はショートメールで、『少し遅くなる』と夜宵に打った。

俺が携帯電話をいじるのを見た八雲は、大袈裟に驚くフリをした。

「携帯電話嫌いなお前が、LINEかよ?」

「LINEじゃない、ショートメールだ。」

「どっちだって良いさ、そんなのは。
そんなに家に置いてきた子猫ちゃんが気になるのか?」

八雲は言う。

「保護してる以上、責任がある。」

俺は答えた。

「なーにが、責任だよ!
ヤクザにそんなもんあってたまるかよ!」

八雲はビールをぐぐいと飲んでそう言った。

「で、話ってなんだよ?」

俺は話を切り出す。

「あぁ、もう知ってるかもしれないが、天雷会の動きがどうも怪しい。
新竜会は、捨て駒だから、そんなに危惧する必要は無いが…」

八雲は言う。

「しかし、華栄会と天雷会は、上手く棲み分けていたはずだろ?
なぜ、急に牙を剥くんだ?」

「この不況やら、経営力不足やらで、どうも天雷会のシノギが減っているらしい。
そこで、俺たちのシマを荒らしたいのさ。

そして…」

「そして?」

「華栄崇史《かえいたかふみ》が絡んでるかもしれん。」

「あの、チキンか。ふん。」

「だが、内情を知るだけに厄介だぞ?
まぁ、話というのはそれだけだ。

子猫ちゃんによろしくな。」

「何か分かったら、情報交換しよう。
じゃあな。」

俺は足早に去った。
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