明けない夜はきっと無い…

25

屋台の確認作業も終わり、屋台から明りが灯り始めた頃、しかし、私と暁さんは帰らなければならなかった。

ヤクザが祭りを楽しむ事は無い、そうだ。

あくまでテキヤのバックに付いて、揉め事が起きないように管理し、みかじめ料をいただく。

ただそれだけだった。

そして、暁さんが運転するBMWに乗って、私たちは花火大会前の会場を後にした。

開始の花火を私は見ながらマンションに帰って行った。

「俺たちの仕事は、こう言う物ばかりだ。
表には決して出ず、浴衣も着れずに、花火も見れない。

そして…

いつ死ぬかも分からない…」

車の中で、信号待ちの時、彼は窓の外を見ながらそう言った。

「平気よ。
別に。

私も…

いつ死ぬかなんて、分からない場所で生きてきたから…
同じだなって…」

「いいや、違う。
自分が死ぬのは良い。

だけど、もしも、大切な存在が殺されたら…
俺はどんな手を使っても相手を刺し殺すだろう…
それでも、その人が戻っては来ない苦しさに耐えなければならない。

だから、大切な人は作らない…」

暁さんは、苦しげにそう言った。

それって…
私に、好きになるな、と言っているの…?

お前は大切な存在では無い…と?

分かってる。

そんな事。

私がオモチャだって事ぐらい。

だけど、その言葉は私の心をえぐった。

BMWは静かにタワーマンションの地下駐車場に着いた。
私と暁さんは、それ以降話す事はなかった。

シャワーを浴びて、夕食に帰りにドライブスルーで買ったマックを食べたけど。

やはり、無言の時間が続いた。
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