明けない夜はきっと無い…

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私たちは、多少、いや、かなりギクシャクしながら、ドライブを終えた。

あの海が…
私たちの約束の地…

だけど、暁さんが死んだら…

2度と行けない、約束の地…







そんな事を車の窓の外を見ながら、ずっと考えていた。

マンションに帰り着くと、すぐに、インターホンが鳴った。

「あぁ…
神桜か…

今開ける。」

どうやら、神桜さんが来たようだ。

「どうした?」

「えぇ、ちょっと急用で…

ん?
なんか、険悪な雰囲気じゃありません?」

「気のせいだろ。
さっさと用件を言え。」

暁さんは、ソファに座りタバコに火をつけると、先を促した。

「あぁ、明日華栄会の若頭全員、帝国ホテルの最上階に集まるように、と、オヤジさんから連絡がありました。
もちろん、正装で来い、との事です。」

「若頭全員?
何事だ?」

暁さんが顔をしかめる。

「それが…
詳細は一切分かりません。

ただ…チャカもドスも持ってくるな、と。」

「そう言えば、オヤジは策がある、とかなんとか言っていたな。
全く相変わらずむちゃくちゃだ。」

暁さんが、高い高い天井に向かって、煙を吐いた。

「危険なの…?」

私は思わず聞いてしまった。

「ふっ…

夜宵さん、私たちはヤクザですよ?

危険じゃ無い事の方が少ないんですよ。」

神桜さんが、鼻で笑ってそう言った。

「夜宵。

大丈夫だから。

あぁ、神桜、夜宵の事1日任せていいか?
ずっと家の中じゃ息が詰まるだろうし。」

暁さんが言う。

「構いませんけど…」

「変なことしたら、ぶっ飛ばすぞ?」

「ペチャパイには興味はありません。」

ペ…ペチャ…パイ…?

「失礼ね!
ぺ、ぺ、ペチャパイじゃ無いもん!」

暁さんと神桜さんは面白そうに笑っている。
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