明けない夜はきっと無い…

54

side暁

『しかし…
言いにくい事だが、妹さんは生きているのか…?

中国マフィアに人質に取られたなら、シャブ漬けにされて風俗に落とされるか、臓器売買で殺されているかもしれない…』

『それでも…
弔い合戦をする事は出来るさ…

そして、彼女の遺体の一部だけでも…
台湾に連れて帰ってやりたい…

暁、君が夜宵の事を想うように、僕は差し違えても妹を奪った奴を殺すと決めている。

君になら分かるはずだ。

その為に、四合会のトップまで上り詰めたのだから。

夜宵の事は悪かった。
そんなに大事にしていると思わなかった。』

ユウシャンは言う。

『そうか…
魂の半分…か…』

俺はウイスキーのグラスを回した。
氷がカラカラと音を立てる。

『暁、君は夜宵に気持ちを伝えるべきだ。
そんなに大事ならば、ね。

僕はもう伝える事さえ、叶わないかもしれない。

君が羨ましいよ。』

『伝えて何になる?

俺はいつ死ぬかもしれないのに?』

『君は臆病だ。

いつ死ぬかも分からないから、今伝えるんだよ。
そして、ちゃんと抱いてやれ。』

『………』

俺は何も言わなかった。

『あぁ、また、明後日君のマンションに行くから、ゲストルーム空けといてくれよ?』

『そんなにホテル暮らしが嫌なのか?』

俺はげんなりして言う。

『そうめんどくさそうに言うなって。
君らの恋のキューピッドをしてやろうと…』

『余計な事はするな。』

俺はピシャリと言った。

『媚薬と睡眠薬なら、腐るほどあるから、欲しいなら言ってくれよ。』

『それが余計な事なんだよ…』

ユウシャンは、呆れ果てる俺を見て、面白そうに笑った。
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