明けない夜はきっと無い…

57

私が神桜さんの家から帰る時、彼は私の肩に手を置いて、耳元で囁き、頬にキスをした。

"あなたを好きになりました。
また、待っています。"

と。

私はかなりの罪悪感とWiiスポーツと空のバスケットを持ってペントハウスに帰った。

良かった。

まだ、暁さんは帰って居ない。

早くWiiスポーツを元通りにしまって、バスケットを戸棚の上に上げて…

私は証拠隠滅に力を注いだ。

何やっているんだろ、私…

暁さんに脈が無さそうなら、神桜さんに転ぶワケ?

自分でも、何がなんだか分からなかった。

だけど、あの人は暁さんが絶対に言ってくれない、"好き"という言葉をくれた。

どうして、好きになってはいけないのだろうか?

分からないけど、私の心は罪悪感でいっぱいだった。













そして、晩御飯のシチューを作っていた頃、暁さんは帰ってきた。

普通通りに振る舞わなければ…

「おかえりなさい。

あれ、ユウシャンさんは?」

「あぁ、一旦はホテルに戻るらしい。
今日シチューか?
旨そうだな。

ちょっとシャワー浴びてくるわ。」

「うん、いってらっしゃい。」

私は平静に平静に装う。

けれど、神桜さんがチラつく!

そして、やっぱりその度に罪悪感が重くのしかかった。









暁さんがシャワーから上がり、私達はシチューを食べた。

「なぁ、夜宵。
で、で、で…」

???

「出かける?」

私は当ててみる。

「いや、違くて。」

ハズレたようだ。

「で、で、デートしよう!!!」

暁さんは言った。

デート………

私は俯く。

「なんだよ、嫌なのか…?」

「う、ううん。
ただ…その…

デートって初めてだから…」

「出かけるのと一緒だよ。
映画でも見に行かないか?」

「うん……」

初デートなのに、初デートなのに…

私は喉の奥に小骨が引っかかるみたいに、神桜さんが心の奥に引っかかっていた。
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