あまく翻弄される

「……料理得意なの？」


手馴れたように作る伊織くんの手元をのぞきこんだまま思わず問いかける。


「いえ。……見てたので」

「え？」

「鳴さんのこと」


流し目で不意打ちに視線が合い、どきりとする。


どう捉えていいのか分からない言葉に曖昧に返して、背中を向けた。

また逃げるように顔を背けた私に伊織くんは何も言わなかった。

見栄張って余裕ある女に見せたいのに全然上手くいかない。



その後出来上がった料理を3人で囲む。


最後まで手伝ってくれた伊織くんには本当に感謝しか出ない。
まったく手伝わなかった雷斗には頭を小突いておいた。