あまく翻弄される









「──…さん、鳴さん、」



心地よい声。

よく知った石鹸の匂い。
だけどどこか違うすごくいい匂い。

夢か現実かその微睡みが心地よくてまだ浸っていたくて、その優しい匂いの元へ手を伸ばした途端。



「………あっぶね、」



真上から聞こえてきた声にハッと意識が覚醒した。

勢いよく顔を上げると、足をベッドの上の布団に絡めて寝ぼけたまま抱きついた私を抱きとめて爽やかに微笑む伊織くんがいた。



「おはようございます、鳴さん」

「……き、」

「ん?」


「きゃああああ!!!!」


思わず叫んだのは仕方ないと思う。

すっぴん、パジャマ、寝顔。
見られた……見られた…!



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