あまく翻弄される
「…………鳴さん」
玄関先で、雷斗に聞こえないように話しかけられる。
「朝、俺が起こしてもいいですか?」
「え?」
「今日と同じ時間に電話します」
それだけ言うと返事も聞かず雷斗の元へ走っていく伊織くん。
毎朝、電話で起こされることを想像して頭がショートしそうだった。恋人でもないのによくない……。
「ちょっと待って。さっきの話だけど、」
そこまで言ってなんて言ったらいいか口をもごもごさせる私に伊織くんは微笑んで、
「鳴さん。毎朝起こしに行ってもいいですか?」
「それはだめ」
とんでもないことを言い出したので慌てて首を振る。
断ることをわかってたように微笑んだ伊織くんは耳元で囁いた。
「……じゃあせめて、
鳴さんが朝起きて一番に聞く声が俺であって」