あまく翻弄される
3
「……朝起きて一番に聞きたい声ってどんな声だと思う?」
「推しの声」
前の席に座りながらもぐもぐとパンを頬張るノノちゃんはこちらを見ず即答で答えた。
艶々とした手入れの行き届いた黒髪。短いスカートから惜しげも無く素足を晒し組む姿は大人っぽい。
「何?その質問?」
「………弟の友達に、」
そこまで言ってぽっと頬が染まる。
なんだかすごく恥ずかしい。
「さては朝起きて一番に声が聞きたいとか言われたんだ?」
「………」
「そこまで言ったなら吐きなさいよ」
ほら、ぺってしちゃいなさい。ペって。なんて好奇心を隠せないとばかりの声に視線をウロウロしながら伊織くんの言葉を伝える。