あまく翻弄される

4




朝。宣言通りに毎朝、伊織くんから電話がくる。


「………おはようございます、鳴さん」


寝起きの少し掠れた低めの声。

それが鼓膜を揺さぶるたび、心臓が早鐘のごとく脈打ち目を覚ます。それを毎朝繰り返すとなるとさすがに心臓がもたない。

それを雷斗に濁してこじつけのように、伊織くんも朝忙しいだろうから無理して起こさなくてもいいと言ってみてもカラカラと笑って取り合ってくれない。

──朝が弱い姉貴を起こすのは伊織にまかせてる。…なんて言う始末。


なら直談判しかないと伊織くんに話しかければ、


「………伊織くん、あの朝の電話のことだけど」

「鳴さんと朝話すとすっきり目覚められるんで俺も助かってます」

「………」


伊織は遅刻常習犯だけど。なんて思ってる雷斗を知る由もなく、そっかと断りきれず頷いてしまう。
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