あまく翻弄される
「……どうしてここに?」
「雷斗に言われて。タイムセールの卵、買いに行くんですよね?俺も付き合います」
何事も無かったように離れた伊織くんは隣に立って歩き出す。
それとは反対に伊織くんの言葉に私の顔はさあっと青くなった。
「……弟がごめんね」
近所のスーパーでやっているおひとりさま1個の卵を買うために弟、雷斗と放課後に一緒に買いに行く約束をしていたのに来たのは弟の友人である一色伊織くんだった。
平謝りしても伊織くんはにこにこと笑みを浮かべてゆるりと首を振った。
「謝らないでください。雷斗はちょっと用事あるみたいなので俺から言い出したんです」
「そうなの…?」
「はい」
「……ありがとう伊織くん」
ごめんなさいも何だか違う気がしてお礼を告げると満足そうに伊織くんも口角を上げた。