あまく翻弄される

「…………熱のせいじゃ、ないんですか…」

「ええ?そういうこと言うの?折角私が認めた感情を伊織くんが否定しないでよ」


私の体温が伊織くんに移っていく。


「……すきだよ、伊織くん」


その言葉に反応したように強く抱き締められる。


「………鳴さん、」

「なあに」

「キスしたい」


ゆっくりと身体を離した伊織くんがこちらを覗き込む。

澄んでると思っていた瞳は全然澄んでなくて、燃え盛るような熱が籠っている。


鼻が触れてもう少しで唇に触れそう──


「……だめ」


──といったところで手を差し込む。
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