あまく翻弄される
目をまんまるに見開いた伊織くんに、
「熱あるから移っちゃう」
そう言うと、艶っぽい笑みを見せて耳に髪をかけてきた。
「……知恵熱は移らない。それに移っても別にいい」
「……」
「だから、今は鳴さんが俺のだって感じさせて」
そんな瞳で、そんなふうに見つめられたら断ることなんてもうできない。
わかったように吐息だけで微笑んで、伊織くんは頬に添えた手を顎に滑らせて優しく掴むと唇を重ねた。
満たされた気持ちに恍惚としていると、ぺろりと私の唇を舐めて驚いて口を僅かに開けた瞬間、柔らかい舌が入り込んでくる。
角度を変えて口の中を蹂躙され、苦しくて胸に手をやって叩いてもするりとその手を取られる。
無我夢中で伊織くんについていっていると、唇が離れたときには気付いたら肩で息をしていた。