あまく翻弄される

「……恋愛初心者には優しくして」


息も絶え絶えにそう言うとたっぷり間を開けて伊織くんはさっきまで私に触れていた唇を薄く開く。


「…………善処する」

全然善処する返事じゃない……。


伊織くんの唇は艶々としていて濡れていた。さっきの行為を思い出して恥ずかしさのあまり沸騰しそう。

視線に気付いてぺろりとその唇を舐めた伊織くんに、ふらってベッドの上に後ろから倒れ込もうとして、背中に回った手に背中からの落下を防がれる。

片手一本で支えられる伊織くんにやっぱり男の子なんだなあ。なんてどこか冷静に頭の片隅で思いつつ、ぶり返した熱がぐわんぐわんと頭を殴ってくる。


知恵熱か。
伊織くんが与えた熱か分からないけどもう無理……。


慌てる伊織くんに気付かないままそのまま夢の中へ落ちていった。

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