あまく翻弄される
瞳の奥の熱を隠すようにをあれだけ長かった前髪がすっきりとしている。澄んだ瞳を惜しげなく晒し、中性的な端正な顔立ちが顕になっている。

ここまで顔を見た事がなかったからまじまじと見つめると照れる様子もなく苦笑した。



「形に拘らなくても気持ちの折り合いはつけましたから。……それに、好きな人が知ってもなお変わらない態度でいてくれて、傍にいてくれるなんて…」


眩しそうに瞳を眇めた伊織くんはそこで言葉を切って、とろりとあまく瞳をとろけさせた。


「──こんなに幸せなことない」


「伊織くん……」


本当に心底幸せそうに微笑むから。
これが私を想っての笑みだと知ったから、愛しさが溢れ出す。


「……俺はきっと、愛だと思う。鳴さん、早く俺に追いついてよ」

< 47 / 75 >

この作品をシェア

pagetop