あまく翻弄される
私がどうして伊織くんの過去を知ったことを知ってたのとか聞こうと思ったのにその表情に言葉を呑む。

あどけない笑みとも時たまみせる艶やかな笑みとも違う笑み。

心底幸せそうに微笑むから、その表情を私がさせたのだと思うとむずむずして、嬉しいのか、切ないのか、恋しいのかはたまた愛しいのか。

わかんないけど、この湧き上がった感情のまま目の前の伊織くんを抱きしめた。



「おーおー。朝からお熱いことで」

「ら、雷斗っ」


ニヤニヤとした表情の雷斗がリビングから顔をだす。

ハッとして体を離すも、すぐに腰にまわった腕で引き寄せられる。
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