あまく翻弄される

「今日、お夕飯一緒にどうかな?」


買い物は順調に進み、卵も買えてほくほくしながらお礼にと尋ねる。

あれもこれもとつい買った大量の食材を細腕で難なく持ってくれたため、私が持つのは自分の鞄だけ。

持つよ。と言っても頑なに断られてしまい、絶対重たいだろうと少しハラハラしている私にお構いなく伊織くんはそんな素振りを見せず同じ歩幅で悠々と歩いていく。



「いいんですか?」

「うん。今日のお礼も兼ねて」

「じゃあお言葉に甘えて。鳴さんの料理好きなんです」


色気なんて感じさせないかにこにことした笑みに釣られて微笑む。
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