あまく翻弄される
名前をつけられなかった感情は膨らむことなく小さく萎んでいって、

「ノノちゃんも気付かせてくれた」

やがて消えるばかりの儚いものだった。
恋という名前を付けるには滑稽で。



「──私、伊織くんが好き」



淡いものだったのに名前を与えた途端それは形になった。決して消えることのない形に。

もう確信している。きっとこれは愛になるって。





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