あまく翻弄される
結局、行くところなんてどこにもなくてノロノロと自宅に戻る。

夜勤のせいで家を空けることが多かった母親もその日は居たから、夕飯は久しぶり母の手料理。

いつもなら浮かれるそれも今日はそんな気分になれず、重たい頭のままベッドに横になった。
制服がシワになるから着替えないといけないのにそれすらも億劫で。

思い浮かぶのは今日の光景ばかり。


……伊織くん、あの人とキスしてた。

用事ってあの人と会うこと?
女の人と遊んでたのは過去の話じゃないの?今もそうなの?

……なら、私は?
私もその遊んでる女のひとりなの?


伊織くんは私を好きって言ってくれた。
それを信じたい。信じたいはずなのに、心は鉛のように重たかった。
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