あまく翻弄される



「それって俺のことが好きでたまらないって言ってんの?」



頬に手を置いたまま、顔をのぞき込まれる。
瞳がドロドロに溶けそうなほど恍惚とした表情。
このままこの瞳の熱に溶かされたい。
そうしたらふたり溶けあえるのに。



「そういうふうにしか聞こえない。これって俺の勘違い?」

「……勘違いだよ」

「そう?さっきからずっと嫌いって言いながら好きって聞こえたけど」

「そ、そんなわけない」



ぶんぶん首を振る素直じゃない私。



「だって私、」

これを言ったら終わりだとどこかで気づいてた。
だけどもう歯止めが聞かなかった。

「……伊織くんとあの人がキスしてても何も思わなかったよ」

自嘲して、言葉の刃を向ける。

「驚くばかりで何も…。最低でしょ?私」

ほんとに最低。

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