あまく翻弄される
玄関を開けてすぐ目に付いたのは弟の乱雑に脱ぎ捨てられた靴だった。


「お邪魔します」

「おかえり、伊織くん」


丁寧に自身の靴を揃える伊織くんにいつものように癖で返事をする。

リビングのソファに寝転がる見慣れた金髪は暢気に

「おかえりィ」

と返事をしながらもスマホから視線を外さない。



「どうだった?放課後デート」


デートという単語に固まる私なんてお構いなく、ニヤニヤとする雷斗。

その言葉に伊織くんは何も言わず微笑んだ。
それを見て雷斗はさらに瞳を弓なりにして愉しそうに笑う。


雷斗と伊織くんは正反対に見えるのにすごく仲がいい。

今だってああやって何も言わなくても通じあったように笑ってる。

私にはさっぱりわからなかったけど。
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