灰を被らないシンデレラ
自分でも驚くほど冷たい声が出た。
今自分はどんな顔をしているんだろう。
きっと酷い顔だ。
そうじゃなきゃ柊がこんな怖い顔をするわけが無い。
「なんだよそれ…」
「私の取り柄って所詮顔と体だけだもんね。不倫した女の娘だし、元ヤンだし…柊さんに釣り合うものなんて、何も無いんだよ」
たまたま、臣永の娘として生まれただけだから。
胸に燻っていたものが全部出てしまった。
言いすぎたと思った時には既に遅く、柊は見た事無いほどに冷たい表情で自分を見ていた。
「お前は…俺の言葉よりあの女の言葉を信じるのかよ」
「…っ、」
信じてた、信じたかったよ。
だけどもう心が折れてしまったんだよ。
先に裏切るような事をしたのは、そっちじゃない。
どれも頭には浮かぶけれど、言葉には出来なかった。
そのあまりにも冷たい目に身体が震えていた。
柊はそのまま何も言う事なく家を出て行ってしまった。
しばらく立ち尽くしていた憂はその場にぺたんと座り込み、自分の放った言葉の数々を深く後悔した。