灰を被らないシンデレラ
ーーああ、この男はどこまでも私を人形扱いするんだ
顔に傷を負い、点滴を打たねばならぬほどボロボロになった姿を見ても尚、憂を人として、娘として見てはくれない。
そう思うと同時に視界が涙で歪み、気付けばぼろぼろと大量の涙が瞳から溢れ出ていた。
「憂…!」
こちらに気付いた柊と目が合った。
次いで父親も視線を向けて、塵でも見るような目つきで言う。
「夫の浮気如きで何をしているんだお前は。やるべき事をやれと言ったはずだ」
どの口がと思った。
妻に散々浮気されてその娘である自分に辛く当たっているくせに。
「直ぐに退院の手続きをする。お前はそのままこちらへ帰ってこい」
けれど幼少期から植え付けられた父親への畏怖は簡単には拭えず、嫌悪しか感じないはずなのに体は尋常でない程に震えが止まらず、流れ落ちる涙も止まる事を知らない。
そして思考が停止しているにも関わらず、口から出るのは謝罪の言葉だった。