灰を被らないシンデレラ

本心




意識が戻り精密検査を終えて医師が告げた結果は過労と栄養不足だった。


「喉の方に異常は見られません。声が出ないのは…恐らく、精神的なものが原因かと」


憂の青痣の残る頬を見て、医師は意味ありげな視線を2人の男に向ける。

そんな医師を前にしながら、憂はぼんやりと床を眺めていた。


声が出ないと分かった時は酷く焦ったけど、今は驚くほど何も感じない。
感情がどこかに落ちてしまったようだ。

全てがどうでもいいとさえ感じていた。


柊ときちんと話そうと思ったのに声が出なければそれもできない。
実家に帰ったところでどうせ同じだ。

どちらに転んでも憂にとっては大差なく、そうなればもう何もかもがどうでも良くなっていた。






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