灰を被らないシンデレラ



あれだけ渦巻いていた感情が一切消え失せ、ただただ2人が下す判断を待っていた。


「憂は俺が連れて帰ります」


柊がそう言った時でさえ、ああそうなんだとしか思わなかった。

父は最初難色を示していたが今現在憂の戸籍は一宮にある上、此処で下手に言い争って実際の内情を調べられたら不利になるのは自分だと思ったのだろう。
そういうところだけは異様に頭の回る男なのだ。



そんな事で退院後、憂は自宅と呼べる場所へ帰ることとなった。

家に戻ってからというもの、柊は献身的に尽くしてくれたと思う。

退院した当日は日曜日で元々休みだったが月曜日も休みをもぎ取ったらしく、憂もまだ体が回復しきったわけでないのでその日は講義もサークルも休むことになった。


その際香里には連絡せねばとの義務感から充電の終えたスマホを見てみれば柊からの大量の着信履歴が残っていた。

電源が落ちた事でGPSも切れていたのだろう。心配をかけたようで申し訳ない。




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