灰を被らないシンデレラ




「前から束縛気質なところがあって、そこが嫌で別れた」


彼女の気持ちも分からなくはない。
柊のような男が彼氏なら不安にもなるだろう。

現にこうして憂は不安になって眠れなくなったのだから。


別れて以降は沙里奈の束縛もなりを潜め、女遊びをしていてもそれを咎める様なことは一度もなかったという。

連絡は度々来ていたが返信せず無視する事もあり、だからといって何があるわけでもなかった。


それが変わったのは柊が結婚してから。

どれだけ無視しようとやたらと連絡を寄越してくるのでしまいにはブロックを決め込んだらしい。


けれどそれが逆効果だった。
その怒りの矛先が憂に向いてしまったのだ。


「あいつが何かしでかす予感はしてたのに止められなかった。…悪い」


頭を下げて謝る柊を見て、憂はテーブルに置いていたスマホを操作する。


[本当に沙里奈さんと今は何も無いんだよね?]
「ああ。あり得ない」
[じゃあどうしてあの人に時計を渡したの?]


画面を見せれば、「知ってたのか」と言われ首を縦に振る。










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