灰を被らないシンデレラ



その言葉には拍子抜けした。
危害なんてそんな大袈裟な。

少し頭のネジが緩んでようが彼女はれっきとしたか弱い女性だ。
並大抵の相手、しかもそれが女とあれば憂が軽くいなせることは柊も知っているはず。


「これは伝えるつもりはなかったが、話すと決めたからには全部言う。…あのストーカーにお前の情報を流してたのは、沙里奈だ」


その台詞を聞いて、憂は少し前に香里とした会話を思い出した。

憂が狙われた理由、それは香里が予想した通り柊が原因だったわけだ。


「ストーカー野郎が警察でゲロった時から沙里奈を疑ってた。大方SNSでお前を攻撃したが上手くいかず焦って丁度良い捨て駒見つけて利用したんだろ。けど証拠はねえし…何より、ただでさえ追い詰められてた憂には話したくなかった」


声は出ないのは当然だが、憂は言葉を失った。

柊のこれまでの行動は全て自分の為だったと言うことだ。


柊の判断は正しい。
確かにあの時にこの話をされていても今ほど柊の言葉をありのまま受け入れられていたか分からない。

柊の言葉は信じる。

けれどだとしたら何故、あの日勇気を出した自分の誘いは断られなければならなかったのか。










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