灰を被らないシンデレラ
帰りの車内、久しぶりの外出でうつらうつらとしていると柊に寝てていいぞと言われ呆気なく意識を手放し気付けば自宅マンションの駐車場に入っていた。
申し訳ないと思いつつ助手席から先に降り、海岸沿いにあった道の駅で買ったお土産をトランクから取り出している柊を車を待っていると、ふと視界の端に人影を感じた。
「!」
その姿に瞬時に身を引いた。
手に持っていた鞄を落とし、体の前で拳を強く握る。
「憂!」
異変を感じ取った柊がすぐさま駆け寄って憂を庇うように前に立つ。
ゆらゆらと焦点の合っていない瞳でこちらを見てくるのはーーー他でもない、沙里奈だった。