灰を被らないシンデレラ
けれど柊はセックスがとても上手い男だった。
きっと彼も同じ事を思っていたのだろう、何度か身体を重ねる内に沙里奈から話を持ちかけて付き合う事になった。
交際を進める中で柊に表の顔と違った二面性がある事を知った時は、優越感でどうしようもない程に気持ちが高揚した。
気付いた時には深くハマっていたのは沙里奈の方で、初めて抱く独占欲を上手く処理できなくて柊から別れを切り出された時は失敗したと直感した。
けれど自分たちには体の相性という強みがある。
だからそれほど焦らなかったし、実際柊はその後特定の女を作ろうとはせず、自分が誘えば拒否もしなかった。
柊が学生の時に会社を立ち上げた際にも、経営者の父を持つ沙里奈の知識は役に立ったと自負している。
自身の就職の際に父親のコネで彼の事業を後押し出来るような業種も選んだ。
沙里奈の献身的な想いはキチンと伝わっていると信じて疑わなかった。
成功者となってそれまでと比にならないほど女に言い寄られても、一度だって彼から恋人などという言葉は聞いたことが無い。
学歴も容姿も家柄も、どれをとっても自分ほど柊に相応しい女は存在しない。
だから機を見て自分からプロポーズをすると決めていた。
これだけ長い付き合いなのだ、彼にとってプラスにしかならないこんな上手い話を頭の良いあの男が断る筈がない。