灰を被らないシンデレラ
そう思っていた矢先、知人を通じて柊が結婚したと耳にし、生まれて初めて絶望感を感じた。
相手は自分より11歳も年下の大学生。
持てる手段を全て使って調べたところ、あの醜聞まみれの臣永の長女だと知った時には怒りで頭がおかしくなりそうだった。
けれど所詮は政略結婚。
何の力もないただの大学生の子供だ。
少し突けば勝手に自滅していくだろう。
SNSで素性を晒した時には男をその気にさせ庇護欲を掻き立てる容姿のせいで擁護する声が多く失敗したけれど、上手くあの女に劣情を抱く男を釣りあげることは出来た。
まあ結果的にその男の馬鹿が過ぎたせいでそれも上手くはいかなかったけれど問題は無い。
所詮は捨て駒だ。
その後直ぐにずっと連絡の返ってこない柊から自分の仕業を疑うメッセージが来た時は酷く興奮した。
ああ、やっぱり自分達は心が通じ合っているのだと。
柊が自分の事を理解してくれている事が嬉しくてたまらなかった。
けれど蓋を開けてみればそれはただの牽制で、妻に近付くなと脅しをかけてきたに過ぎなかった。