灰を被らないシンデレラ
許せなかった。
これだけ自分は柊を愛しているのに、その一欠片すらも彼からは返ってこない事実が我慢できなかった。
翌日、女が家を出たタイミングで柊を脅して呼び出して2人でいる所を見せつけた。
少しは揺らげば良い。
この時はお互い目を背けたくなるほどに強く想い合っている2人をかき乱すことしか最早頭に無かった。
けれど臣永憂は何処までも自分を地獄へ突き落とす。
彼女が倒れたと知らせを受ければ柊はそれまで何より大事にしていた仕事を投げ打って駆けつけるし、彼女の為に購入した4桁は軽く超える高級マンションですらアッサリと手放した。
挙句、自分にあれだけ惚れ込んでいた男でさえも憂に絆されこれ以上は協力できないと去って行った。
何故。どうして。
どうしてあの女ばかり愛されるの。
お姫様になるはずは自分のはずなのに。
「絶対に…許さない」
そうして気付けば、沙里奈は男が最後に残していった情報である2人の新しい住所に足を運んでいた。