灰を被らないシンデレラ
決着
「柊…どうして?」
女の雰囲気は以前とは比べ物にならない程に変わっていた。
艶やかだった亜麻色の髪は乱れ、綺麗にメイク施されていたはずの顔は青白く生気を感じない。
「どうしてそんな女なの?」
沙里奈の目には柊しか映っていないようで、その瞳は涙で濡れている。
「接近禁止命令を出したはずだが」
「どうして勝手に居なくなったの?なんで私を捨てたの?」
会話が成り立っておらず、話し合いが出来る状態ではない。
警察を呼ばなければと思うのに声の出ない自分にはどうする事も出来ず、ただ柊の背中を見ているしか出来なかった。
「何度も言ったはずだ。恋人なんてのはお前の勘違いだって」
「そんな事ない!だってどんな女と寝たって私のところに戻ってきてくれたじゃない!」
「お前が勝手に付き纏ってきただけだろ。俺の意思じゃない」
「…っ、なんでそんな女なのよ」
沙里奈の憎悪に満ちた視線が憂へ向き、震えながらも負けじと睨み返した。