灰を被らないシンデレラ
その油断がいけなかった。
彼女に同情を寄せてしまったばかりに、その懐に隠されていた物に気付けなかった。
「あんたさえ、居なければ…!」
まるで映画のワンシーンかのように、目の前の景色がスローモーションで動く。
自分に向かう鈍色の鋭い物がナイフだと気付いた時には、既にもう目の前まで来ていた。
ーーダメだ、このままじゃ柊さんが…!
自分を狙う刃先はどう逃れようと前に居る柊に当たってしまう。
そう感じた刹那、憂は柊を退かそうと咄嗟に腕を伸ばした。
しかし物質に当たるはずのそれは宙を舞い、確かにそこに居たはずの姿が目の前から消えていた。