灰を被らないシンデレラ
ふと目が覚めるとカーテンから漏れる光は弱く、まだ日も上がりきっていない早朝である事が伺えた。
久しぶりの気怠さに見舞われるが心は幸せで満ちていた。
目の前で美しい顔で眠る夫の唇に触れるようなキスをして微笑めば、昨日までとは確かに違うものを感じた。
違和感の正体に気付いたのはすぐだった。
喉元に手を当てて息を吐けば、懐かしい音が鼓膜を刺激した。
憂の動作に柊も夢から覚めたのか、ゆっくりと瞳を開いた。
美しいアーモンドアイに自分の姿が映るのを見て、憂は一筋の涙を流しながら微笑んだ。
「おはよう、柊さん」