灰を被らないシンデレラ
数ヶ月ぶりの声は掠れた上にしわがれていて聞けたものではなかったけれど、確かに音となって口から発せられた。
刹那、覚醒した柊は憂を痛いほどに抱きしめて肩を震わせていた。
一生このままでいいなんて言っていたくせに、と意地悪な事を考えながら憂は柊の首へ自身の腕を絡ませる。
確かにもう以前のような関係には戻れない。
前よりもずっとこの人を愛しいと思うから。
自分はプリンセスなんかじゃないし、もう灰はかぶりたくない。
だけど柊に、この人だけに愛してもらえるならシンデレラにはなってみたいと思う。
ーーだって、灰かぶりのお姫様は王子様と末長く幸せに暮らすって決まってるから
そんな馬鹿げた事を考えながら、愛しい夫と幸せに満ちた口付けを交わした。