灰を被らないシンデレラ
終章
純白のドレスに身を包んだ自分の姿を見つめる。
上半身は透け感のあるレースが施され、裾が大きく広がった高級感のあるミカドシルクのロングトレーンドレスは自分でもよく似合っていると思うが、まさかこれを着る日が来ようとは思いもしなかった。
お姫様のようになりたいとも思わなかったし、とりわけ結婚なんてものは不仲な両親を見てきたせいで憧れなんてものは生まれる前から消え失せていた。
だから柊から二人だけの結婚式を提案された時は正直渋った。
必要を感じなかったから。
けれど約束通り仕事が落ち着き一週間の休みをもぎ取った柊がこの日の為に楽しそうに準備をしている姿を見ると、まあ良いかと流されてここまで来た。
丘の上のリゾートホテルでの結婚式なんて、どこかで聞いたプリンセスのようだ。
不意に控え室のドアが叩かれ、別室で準備をしていた柊が入ってきた。
憂のドレス姿を見るや否や満足気な顔をし、愛おしそうに目を細めた。
「やっぱり二人だけにしといて正解だな」
「どうして?」
「あ?こんな綺麗な姿、他の奴に易々と見せられるわけねえだろ」