灰を被らないシンデレラ





柊の口から紡がれた綺麗という言葉に自然と頬を染める。

そういう柊だって、グレーの細身のタキシードは高い身長と長い手足を持った抜群のスタイルを際立たせているし、オールバックにかき上げられた髪型は彼の美しい顔立ちを全面に押し出している。

そんな夫の姿に思わず見惚れていると、柊が目の前でスッと片膝をついた。


「少し裾上げるぞ」
「えっ、何?」

戸惑う憂を他所に柊は小脇に抱えていた箱から何かを取り出した。


「靴?」


柊が取り出したのはレースとビジューがふんだんにあしらわれた品の良いパンプスで、憂の足を少し持ち上げるとそれを足にはめた。


「良い靴は良い場所に運ぶっていうだろ。だからこれだけは俺が用意したかった」
「え…」
「それが何処だろうと、連れて行っていいのは俺だけだからな」


履かされた靴は驚くほどに憂の足にピッタリと合い、それを確認した柊はよしとばかりに顔を上げニヤリと笑う。










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