灰を被らないシンデレラ





「お前のサイズに合わせて作らせたお前だけの靴だ。ありがたく受け取れ」
「……」


憂だけの靴。憂にしか履けない靴。
そんなの、シンデレラのガラスの靴みたいじゃないか。

感極まるあまり口から漏れてしまっていたのだろうか、柊は肩をすくめながら続けて言った。


「ガラスじゃねえのはまあご愛嬌だ。それにどっかに落っことして逃げられたんじゃたまったもんじゃねえからな」
「…ふっ、何それ」


なんだか可笑しくなって小さく笑えば、もうすっかりと治った頬に手が添えられ、そのまま触れるだけの優しいキスをされた。


「メイク崩れちゃうよ」
「舌入れられねえだけ感謝しろや」


どこまでも強引で自分勝手な王子様だ。
けれどそれでいて、誰よりも自分を愛してくれる優しい王子様。

ん、と差し出された手に自分の手を添えて立ち上がった。
履いているのかも分からないほどに自分の足にあった靴は、確かにこれから幸せな未来へ運んでくれそうな気がした。




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