灰を被らないシンデレラ



柊を見送り今日の為に用意したワンピースドレスを身に纏い、美容院で髪を結い上げてもらったその足で憂は結婚式場へと入った。

サークルが同じだった懐かしい顔ぶれと雑談をしながら開始を待ち、披露宴会場に新郎と共に純白のドレス姿で現れた香里を目にした時には思わず涙腺が緩んでしまった。


「香里、おめでとう…!すごく綺麗だよ」


テーブルラウンドに来た際には感極まって震える声で話しかけ、そんな憂の顔を見た香里はけらけらと笑い声を上げた。


「私より憂が先に泣いてどうするの」
「だって嬉しくて…」


この数年で少し涙腺が弱くなった自覚はある。

それを差し置いても初めての友人の結婚は胸に刺さるものがあった。

新郎は彼女の高校時代からの恋人らしく、長くを共にした2人の纏う空気はよく似ていて穏やかで、とてもお似合いの素敵な夫婦だった。


「披露宴しか呼べなくてごめんね。神前式にしたから家族しか入れなくて」
「ううん。でも今度写真は見せてね」


香里の白無垢姿、絶対に見たいに決まっている。

それからは余興を楽しみながら他の友人とも懐かしい会話に花を咲かせ、香里の家族への手紙で号泣してしまった事を除けばとても素晴らしい式だった。





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