灰を被らないシンデレラ



思った事をつい口にしてしまった。
そんな憂の言葉を聞いて男の額に青筋が走る。


「お前やっぱり馬鹿にしてんだろ」
「違っ…だってあまりに顔が怖くて」
「誰の面が凶悪だ!こちとられっきとした社長サマだ!」


男は顎を掴んでいた手を離し、懐からスマホを取り出して何やら操作をして画面を見せてきた。


一宮柊(いちみやひいらぎ)。そう言えば分かるだろ」


画面に映るのは男の名乗った名前とその宣材写真。よく見れば間違いなく同一人物だ。


「…一宮って、あの…?」


その名前は知っていた。

今や誰もが知るECサイトを手掛ける会社の創業者の名前だ。
もちろんその名前も顔も知っていたが、あまりにも雰囲気が違いすぎる。

一宮柊といえば整った容姿は勿論のこと、その穏やかな物腰と丁寧な言葉選びで一部では「王子様」などと呼ばれているが、その一方で異性関係は派手で一度抱いた女は二度と抱かないとまで言われるプレイボーイとしても有名だ。

ギャップ萌えとかそんな次元じゃない。
これは完全な詐欺だ。もはや案件だ。





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