灰を被らないシンデレラ
自分よりは年上だがまだ若く、細身で銀縁の眼鏡の奥の瞳はスッとした切れ長の形をしていて気の強い印象を与えるが、美人で好みのタイプだったので正直浮かれた。
台本通りの流れを守りつつ少しアドリブや独自のコメントを加えながら社内を案内をされ、一通り終えたところで社長のインタビューの時間となった。
小綺麗な応接室へ通され、社長秘書を名乗る美女が「間も無く参りますので少々お待ちください」と言って微笑みながらお茶を用意してくれた。
なんて役得なんだ。
そうして本当に間も無くして一宮社長と対面したのだが、これで本当に四十かと疑いたくなるような美丈夫で思わず息を呑んだ。
自分もテレビに映る者としてそれなりに整ってはいると思うが、この男はそもそもオーラが違う。
これが20代にして業界のトップに食い込んだ男の貫禄かと思うと、同性の自分でさえ思わず惚れ惚れしてしまいそうだった。